23/24シーズンのジローナは開幕から予想外の躍進を続け、31試合終了時点で20勝5分け6敗という成績で3位につけています。
開幕から12試合で2桁勝利を成し遂げたのはラリーガ94年の歴史の中で3強と1934年のレアルベティスに次いで史上5チーム目ですし、16節ではバルセロナに大勝を収めました。
そのため、なぜジローナは強いのか?理由が気になる方も多いですよね。
そこで、この記事ではジローナの基本情報から23/24シーズンのジローナはなぜ強いのか?詳しく解説していきます。
目次
ジローナの基本情報
スタジアム | 本拠地 | 監督 |
エスタディ・モンティリビ | カタルーニャ州 | ミチェル |
ジローナのスタジアムと本拠地
ジローナのスタジアムはエスタディ・モンティリビであり、収容人数は13,286人とラリーガの中では最も収容人数の少ないスタジアムとなっています。
3強との比較ですが、バルセロナのスタジアムであるカンプノウ(現在は改修中)は99,354人、レアルマドリードのスタジアムであるサンティアゴ・ベルナベウは81,044人、アトレティコマドリードのスタジアムであるシビタス・メトロポリターノは67,829人です。
この3チームと比べてもかなり規模の小さなスタジアムで戦っていることが分かると思います。
ただ、その分地元のサポーターの応援を一身に受けることができます。
また、ジローナの本拠地はカタルーニャ州であり、同州の有名クラブとしてはバルセロナがありますよね。
ジローナの直近5年間の成績
シーズン | 順位 | 勝ち点 | 得点 | 失点 | 国王杯 | |
18/19 | 18位 | 37 | 37 | 53 | 準々決勝敗退 | 2部へ降格 |
19/20(2部) | 5位 | 63 | 48 | 43 | 3回戦敗退 | |
20/21(2部) | 5位 | 71 | 47 | 36 | ラウンド16敗退 | |
21/22(2部) | 6位 | 68 | 54 | 42 | ラウンド16敗退 | 1部へ昇格 |
22/23 | 10位 | 49 | 58 | 55 | 2回戦敗退 |
このように、ラリーガでの成績が振るわないどころか18/19シーズンには2部に降格し、21/22シーズンまで2部に所属していたことが分かります。
ジローナはなぜ強い?23/24シーズン快進撃が続く理由
21/22シーズンまで2部に所属していたジローナが、23/24シーズンに快進撃を続けている理由をフロント面と戦術面に大別して解説していきます。
フロントの素晴らしい補強戦略と一貫性をもったチーム作り
ジローナは2017年にマンチェスターシティを筆頭に多数のクラブを保有しているシティ・フットボール・クラブ(CFG)の一員となりました。
それ以来、ジローナにはCFGに蓄積されているノウハウが注入されるだけでなく、CFG傘下のクラブとのコネクションを活かした素晴らしい補強戦略が展開されています。
それでは、今シーズンの補強について見ていきましょう。
22/23シーズンを10位で終えたジローナは13得点を決めたカステジャノス、左WGのリケルメ、アンカーのロメウなど多くの主力が流出しました。
このような状況の中で、31節時点で8ゴール7アシストを記録している19歳のブラジル人WGであるサヴィーニョはCFG傘下のトロワからレンタル移籍で獲得、右のダイナモとして躍動しているヤン・クートはマンチェスターシティからレンタル移籍で獲得しました。
また、4ゴールを決めている攻撃的ミッドフィールダーのヤンヘル・エレーラも22/23シーズンをシティからのレンタルで過ごした後に完全移籍で獲得しました。
さらに、23/24シーズンの補強ではありませんが、スペイン代表に初招集された中盤のプレーメイカーであるアレイシス・ガルシアも2017年にシティからレンタル移籍で獲得した選手でした。
ただ、ジローナはCFG傘下のクラブから良い選手を補強をしている訳ではなく、デルフィ・ヘリとキケ・カーセルという2人の存在も非常に大きなものとなっています。
現在ジローナの会長を務めているヘリはキャリアの最初と最後をジローナで過ごしており、当時経済的にも組織的にも厳しい状況にあったクラブを手助けしたいという思いから会長を引き受けたとインタビューで語っています。
ヘリ曰く、現在久保建英選手が所属していてCLの決勝トーナメントへの進出を決めたレアル・ソシエダのモデルが自分達にも当てはまるとのことです。
それは、突如チームの方向性を転換するのではなく一貫性をもって強化への道を歩んでいったという点です。
ジローナは一貫した方針を持ってパブロ・マチン、ウンスエ、エウゼビオ、フランシスコ、現監督を務めるミチェルに至るまで基礎の部分を築いてきたとも語っています。
実は、ミチェルは2018年に昇格したラージョ・バジェカーノで監督としてのキャリアをスタートさせたものの、リーグ戦7連敗を喫するなど成績不振に陥り翌シーズンに解任されました。
そして、次に就任したウエスカでも成績不振から解任されました。
このような経歴のミチェルをクラブに招聘したことも一貫した方針を持っていることの裏付けでしょう。
実際、守備に重点を置く他の小規模クラブとは異なり、ミチェルは総力攻撃を重要視すると共にヘリ会長を中心としてミチェルの志向するサッカーを実現するためのチーム作りを行っています。
また、ヘリは今成功している要因の一つにピッチコンディションがあるとも語っています。
ヘリは選手達が最高のパフォーマンスを発揮できるようにピッチコンディションが完璧であるかどうかを毎日確認しているそうです。
正直、会長が直々に芝生の状態を確認するということはかなり珍しく、こういった会長の姿勢もクラブの快進撃の一因だと思います。
キケ・カーセルも大事な存在です。
2014年にスポーツディレクターに就任したカーセルは上記で紹介したCFG傘下のクラブとの取引だけでなく、マンチェスターユナイテッド・アヤックスなど名門クラブで主力だったDFのブリントをフリーで獲得、バルセロナからCBのエリックガルシアをレンタルで獲得しています。
また、レアルマドリードから左SBのミゲルを獲得しています。
2000万ポンドという約40億にも満たない予算の中で流出した主力の穴を埋めるだけでなく、更にチームを強くしているのです。
カーセルのネットワークは西欧だけに留まらず、東欧のウクライナにまで及んでいます。
実際、22/23シーズンの途中に攻撃的ミッドフィールダーであるツィガンコフを獲得、CFのドフビクを今シーズンのオフに獲得しました。
ツィガンコフはクラブ通算43試合出場で9ゴール・10アシスト、ドフビクは23/24シーズンに17ゴール・5アシストとそれぞれ好成績を残しています。
このように、ジローナはヘリ会長とカーセルSDを中心にCFGから蓄積されたノウハウを活かしながら安価で素晴らしい能力を持った選手を次々と獲得しています。
超攻撃的な戦術
ジローナは超攻撃的でポゼッションサッカーを展開しています。
ジローナの攻撃時にはフォーメーションが2-3-5になるなど前線への圧をかなり高めていますが、その際に重要になるのがブリントの存在です。
ブリントは通常時にはスリーバックの一角を担っていますが、攻撃に転じると中盤に位置を変えます。
そして、数的優位の状態を作り出すことで相手の右サイドに負荷をかけ続けると共にサヴィーニョが仕掛けるためのスペースを生んでいるのです。
仕掛けたサヴィーニョは最前線に位置するドフビクに向かってクロスを供給していきます。
勿論、逆サイドに位置するヤン・クートもテクニックを駆使してドフビクへのクロス供給を積極的に行っています。
また、サヴィーニョが仕掛けて相手を引きつけたことでフリーになったスペースにブリントが移動し、そこからエリア内にクロスを入れていくこともあります。
そして、相手チームもどんどん前線にクロスを入れられることでラインが下がっていきます。
そこで、中盤のガルシアがバイタルエリアにできたスペースに侵入し、サイドからのマイナス気味のクロスに合わせてミドルシュートを決めるという形もあるのです。
また、カウンターを仕掛けるときには前線の3人で決めきるケースがありました。
サヴィーニョあるいはヤン・クートがドリブルを仕掛け、相手の後方にできたスペースに走り出したドフビクに対してスルーパスを供給する場面も多く見られます。
ただ、ドフビクはパスも得意であり、自身が相手を引きつけることで生まれたスペースにサヴィーニョ、あるいはヤン・クートが走り込み彼らに向かってパスを出すという場面もありました。
このように、超攻撃的サッカーを展開するジローナは63得点を決め、ラリーガで2位のゴール数を誇っています。
しかし、ジローナはトランジッションの部分で少し弱点があるのでした。
実は、失点数が39と最小失点(20)のレアルマドリードと比較すると物足りない数字です。
ジローナはボールを奪われた瞬間にプレスをかけて陣形をコンパクトにすることで対処していますが、相手チームが突破口を見つけてしまうと超攻撃的サッカー故に最終ラインが整わずに失点してしまうというケースがあります。
例えば、対レアルマドリードの3失点目はその形が如実に表れていました。
そのため、優勝を狙うにあたってトランジッションの部分は改善していく必要があると思います。
今後のジローナはどうなるか?考察
SNS上では「ジローナの躍進は年単位で続く」という声もあれば、「後半戦には落ちてくる」という声もあります。
ジローナは基本週一で試合だし割と長く快進撃を続けそうではあるよね。— はる (@YH170798) November 5, 2023
ジローナ強いんやろうけど、ソシエダも年明けるまで1,2位やった時あったしほっといたら落ちるべ— ペヨングクレ (@CuIeleIe) November 11, 2023
ただ、僕は今後もジローナの躍進は続くと考えています。
なぜなら、フロントが信念を持って長い年月をかけてチームを強化していき、優秀なタレントを次々と獲得しているからです。
欧州サッカーやJリーグを見ていて、フロントがダメだとどんなに素晴らしい選手と監督がいても徐々に衰退していくと感じています。
例えば、バルセロナは14/15シーズンに3冠を達成しましたがバルトメウ会長が財政に見合わない上にチームに合ってない選手を連れてきたことで、大幅な財政赤字とチームの弱体化という結果に繋がってしまいました。
一方で、ジローナは引き抜かれても安価でチームにフィットする選手をしっかりと補強しています。
そのため、今後もジローナの快進撃は続くでしょう。
まとめ
23/24シーズンのジローナは31節終了時点で3位につけています。
2年前まで2部、去年は10位と優勝争いとは無縁だったため、なぜジローナが強くなったのか疑問に感じているサッカーファンも多いですよね。
そこで、今回の記事ではジローナの基本情報を記載することに加えて、フロント面と戦術面に大別して強くなった理由を解説してきました。
このまま、15/16シーズンのレスターのようにジローナがミラクルを起こすのか注目ですね。
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